Markdown で書くのは快適です。問題は、提出先が Word ファイルを求めてくるときです。
社内の申請書、学会の要旨、クライアントへの納品物。相手は Markdown を知らないし、知る必要もありません。ここでは Mac で Markdown を Word(.docx)に変換する方法を 3 つ、それぞれの向き不向きとあわせて紹介します。
方法 1:Pandoc(無料・コマンドライン)
Pandoc は文書形式を相互変換するオープンソースのツールです。Homebrew が入っていれば、インストールは 1 行です。
brew install pandoc
変換も 1 行です。
pandoc 原稿.md -o 原稿.docx
見出し、表、リスト、コードブロックはそのまま Word のスタイルに変換されます。会社の書式に合わせたいときは、ひな形の .docx を用意して参照させます。
pandoc 原稿.md --reference-doc=テンプレート.docx -o 原稿.docx
- 向いている人:ターミナルに抵抗がなく、同じ変換を繰り返す人。スクリプトに組み込みたい人
- つまずきやすい点:Mermaid などの図はそのままでは画像になりません(別のツールと組み合わせる必要があります)。日本語のフォント指定や目次の調整で、結局テンプレート作りに時間を使うことがあります
方法 2:オンラインの変換サービス
ブラウザにファイルをドロップすれば変換してくれるサービスが多数あります。手軽さでは一番です。
ただし、原稿が他人のサーバーにアップロードされることは理解しておいてください。未発表の論文、顧客情報を含む議事録、社外秘の仕様書を通すべきではありません。会社によっては規程で禁止されています。
- 向いている人:公開予定の文章を、たまに変換するだけの人
- 向いていない人:機密性のある文書を扱う人
方法 3:書き出し機能のあるエディタを使う
執筆に使っているアプリ自体が .docx を書き出せるなら、いちばん手数が少なくて済みます。コンバータのインストールも、アップロードも不要です。
私たちが作った Markdocx は、この考え方で作った Mac の Markdown エディタです。
- Word(.docx)と EPUB をアプリ自身が書き出します。Pandoc のインストールも設定もコマンドラインも不要です。PDF・HTML・Markdown への書き出しにも対応しています
- Mermaid の図を内蔵。フローチャート、シーケンス図、ガントチャートなど 10 種類をツールバーから挿入でき、描画は Mac の中で完結します。インターネット接続も外部サービスも使いません
- ライブプレビュー。左右または上下に並べ、双方向のスクロール同期で同じ段落にとどまります
- GitHub Flavored Markdown。表、タスクリスト、打ち消し線、シンタックスハイライト付きコードブロックに対応
- ファイルはプレーンな .md のまま。他のエディタとの併用もできます
執筆・ライブプレビュー・Mermaid の図・アウトラインは期限なく無料で使えます。最初の 14 日間はすべての機能を試せて、その後は買い切りの Markdocx Premium で Word の読み込みと各形式への書き出しが解除されます。サブスクリプションではなく、同じ Apple Account の Mac すべてで使えます。macOS 26 以降が必要です。
どれを選ぶか
| 手軽さ | 機密性 | 図(Mermaid) | 費用 | |
|---|---|---|---|---|
| Pandoc | △(CLI) | ◎(ローカル) | △(別途必要) | 無料 |
| オンライン変換 | ◎ | ✕(外部送信) | △ | 多くは無料 |
| 書き出し機能のあるエディタ | ◎ | ◎(ローカル) | ◎ | 買い切り |
繰り返しの自動化なら Pandoc、日常の執筆から提出までを 1 つのアプリで完結させたいならエディタの書き出し機能、という選び方になります。
変換でつまずきやすいところ
- 画像の相対パス:
のような相対パスは、変換時に画像が見つからないと抜け落ちます。原稿と画像の位置関係を変えないでください - 表の列幅:Markdown の表には列幅の概念がありません。Word 側で調整することになります
- 見出しレベル:
#(H1)を本文タイトルに使うか、文書タイトルは別に持つかを決めておくと、目次がきれいに出ます - 改行の扱い:Markdown では単一の改行が改行として扱われないのが標準です。日本語の原稿では、この挙動を選べるエディタだと楽です
